【この記事を書いた人】中田裕二
銀行員、不動産仲介、不動産投資の経験を通して、中古マンション売買に関するリアルな情報を発信。
710万円で購入した中古マンションを、4年後に900万円で売却した実績あり。(投資物件としての運用益も含めて利益は345万円に)
その経験を不動産会社は絶対に教えない中古マンションの正しい選び方としてお伝えしています。↓
中古マンションを自宅として購入するなら、長く安全に住み続けたいですよね。
老朽化にともなってしっかりと修理・修復され、安全性が維持される物件が欲しいと思うのは当然です。
中古マンションの「建て替え」は、長く安全に住むための一つの手段です。実行されれば新築に生まれ変わり、最新の設備と耐震性が約束されます。
ただ、「建て替え」を経験した人なんてほとんどいないので、実態がつかめていないのではないでしょうか?
- 「建て替えされる時期は?築年数は何年ぐらい?」
- 「費用はいくらかかるの?」
- 「中古マンションを検討中だけど、建て替えを狙って買うことはできる
建て替えに関しては、もはや疑問しか湧いてきません。
結論から言うと、中古マンションの「建て替え」はほとんど行われていないのが現状です。
建物がどんなに古くなっても、大規模修繕で物件を修理・修繕して維持していくことがほとんどです。
中古マンションの建て替えがほとんど行われないのは、3つの壁に阻まれているからです。そして、奇跡的に実行された中古マンションの事例を見てみると、3つの共通点があることも発見しました。
この記事では、謎が多い中古マンションの「建て替え」の実態に迫ります!
中古マンションの建て替えを阻む壁は「費用、法律、決議期間」
中古マンションの建て替えが行われることはほとんどありません。
平成28年4月時点で、全国のマンション約10万件(※)のうち、建て替えが完了した物件はわずか227件です。(※全国のマンション戸数633万戸を1件60戸で換算した場合の数値。参考:国土交通省「分譲マンションストック戸数」)
今までで、全体の0.22%しか建て替えが行われていないのです。(実施予定も合わせても0.25%)
上記の数値は、下記の国土交通省のデータに基づいています。
これほど「建て替え」が行われないのは、3つの壁が存在するからです。
順にご紹介していきます。
- 費用
- 法律
- 決議機関
1.払えないと立ち退き?建て替えの費用負担はいくら?
中古マンションを建て替えるには、基本的に所有者が費用を負担しなければなりません。
費用の金額はいくらかと言いますと、新しく建築する建物のグレードにもよりますが、目安は1000万〜2000万円と言われています。
また、建築している間の仮住まいや引っ越しの費用も自己負担です。
管理組合が毎月積み立てていた「修繕積立金」も利用しますが、それだけで賄うのはほぼ不可能なため、所有者の費用負担が掛かってきます。
万が一、これらの費用が払えない場合は、区分所有権の買取請求権によって、物件を時価で買い取ってもらうことになります。加えて、管理組合に払っていた修繕積立金の残高から、自分の取り分を請求できます。
買取請求権や立ち退き料なども拒否して「ここから一歩も出ない!」と居座ると、強制的に立ち退きされるか否かの裁判になる可能性があります。しかし、日本では「私有財産権※」が強く守られているので、強制立ち退きを行使するのは難しいとされています。
(※私有財産権・・・財産を個人が所有できるという絶対的な権利)
2000万円という大きな金額をいきなり準備しろと言われても、いきなりポンとお金を出せる所有者は少ないです。しかも私的財産権で強制的に立ち退きさせることも難しい。
費用が払えるか払えないかで、中古マンションの建て替えの話は行き詰まることがほとんどです。
2.法律(建て替え円滑化法)により所有者3分の2の賛成が必要
中古マンションの建て替えを行うには、区分所有者の5分の4以上の賛成票が必要であると、区分所有法や建て替え円滑化法で決まっています。
(建替え決議)
第六十二条 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
しかし、平成28年2月5日に閣議決定された「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」によって、下記の変更がありました。
自治体が再開発事業と承認した場合 | 区分所有者の「3分の2以上」の合意でOK(変更) |
それ以外の場合 | 区分所有者の「5分の4以上」の合意でOK(現行のまま) |
上記の改正により、再開発と承認された場合のみ「区分所有者の3分の2の合意」で建て替えができるようになりました。
私が知っている事例としては、千葉県船橋市の某駅前の再開発における団地の建て替えです。私の知り合いの不動産投資家がたまたま駅前の団地1室を購入していたらしく、オリンピック後の実施が決まったようです。
持ち出しの費用は100万円と安く「100万円で新築マンションが手に入る〜!やった〜」と喜んでいました。東京に30分で行ける駅から徒歩3分ですから2000〜3000万円の価値はあります。
ただし、上記は本当にラッキーな案件です。
実際に「5分の4以上」や「3分の2以上」の賛成票を得るのは、小規模マンション(10戸以内)であれば簡単かもしれないですが、一般的な10〜100戸規模のマンションでは至難の業です。
所有者の8割以上の人が、1000万円〜2000万円の建て替え費用を蓄えていることは考えにくく、お金が準備できなくて反対する所有者は必ず出てきます。
また、老朽化したマンションには、様々な年齢層の人が住んでいるので、「今更引っ越したくない」「修繕で十分」など意見も分かれます。
事例のような「100万円で3000万円の新築マンションが手に入る!」のような、区分所有者が大きなメリットを感じるものがない限り、法律の壁をクリアすることは難しいでしょう。
3.建て替え決議に期間と手間がかかる
中古マンション建て替えの「検討から実施」までの期間は、約2〜3年かかります。物件によっては10年、20年かかるケースもあり、簡単に実施できるものではありません。
中古マンションの建て替えには、下記のプロセスがあります。
上記は、「一般社団法人マンション再生協会」のマンション建替え円滑化法の概要の資料私が補足をしたものです。
1〜6の全行程でも短くて2〜3年、最悪のケースは1の「決議」のみで何十年と期間を費やすパターンです。
検討段階で意見が分かれたり、物件の状態によっては計画を妨げる問題を抱えていたりなど、スムーズに実施まで進むことはほぼないと言われています。
これだけ決議の期間が長くかかり、障害が多くて面倒なのであれば、建て替えが実現しないのは当然ですよね。
建て替えされた中古マンションの事例から見る3つの共通点
実現がほぼ不可能に近い中古マンションの建て替えですが、実際は今までに227件の実例があります。
この227件は、「5分の4(3分の2)以上の賛成票」を集められたのでしょうか?8割近いの世帯は、「2000万近い費用」を出せたのでしょうか?
建て替えされた中古マンションの事例から分かった3つの共通点を明らかにしていきます。
- 容積率
- 建て替えの時期=築年数30年
- デベロッパーが好むエリア
1.容積率が余っている物件は所有者の持ち出しがない?
建て替えをした中古マンションは、ほとんどが「所有者の費用負担なし」で実施されています。建築費用だけでなく「仮住まい・引っ越し」の費用もかかっていません。
費用のほとんどを不動産デベロッパーが負担しているからです。
デベロッパーが費用を負担するケースというのは、「既存のものより大きなマンションが建て替え可能で、増えた分の戸数を売却することで利益が得られる」という条件を満たすことです。
所有者の費用負担がないのは、大きく見込める余剰分の売却利益で賄えるです。
中古マンションの建て替えが実現しないのは、莫大な費用がかかって賛成票が得られないからです。費用が払えない人が反対するのは当然です。
しかし、不動産デベロッパーが現れ、「建築費用はすべてこっちが出すので建て替えませんか?あなたはタダで最新の設備、耐震基準の整った新築マンションを手に入れられます。あ、もちろん引っ越しと仮住まいのお金も出しますよ!」と言われたらどうでしょう?
私なら「ぜひお願いします!」と即答します。
では、デベロッパーが売却利益を出せる物件とはどんなものかと言うと「容積率が余っている物件」です。
容積率とは「敷地面積に対する延床面積の割合」を表しています。仮に、100㎡の土地に対して、1階70㎡、2階30㎡の建物であれば、容積率は100%です。
この容積率が、時代の流れとともに緩和されることがあります。
もし、住んでいる物件の容積率が新築のときよりも緩和されていると、更に大きく建て替えることが可能なのです。
このように、容積率が余っている物件に不動産デベロッパーが介入することで、中古マンション建て替えに立ちはだかる「費用」と「賛成票」の壁を一気に壊すことができます。
現実的には、デベロッパーが介入して実施される方法が8〜9割を占めているのです。
2.建て替え時期は築年数30年が目安?
中古マンションの建て替えが行われる時期の目安は「築30年」というデータがあります。
建替えられたマンションの寿命は全国平均 33.4 年 東京都 40.0 年
参考:東京カンテイ「マンション建替え寿命」
築30年が目安とされているのは、2回目の大規模修繕の時期であり、建物の資産価値が薄れているタイミングだからです。
大規模修繕をするくらいなら、新築マンションにしてすべてを一新させた方が建物の寿命も資産価値も高まると考えるため、建て替えが検討され始めるのです。
東京や大阪の建て替えのタイミングが築40年前後と長めなのは、都心の場合は物件が古くても資産価値が高く需要があるので、急ぐ必要がないからです。
建え替えは、建物本来の築年数ではなく、資産価値に合わせて行われます。
3.デベロッパーが好む人気エリアかつ駅近の物件
不動産デベロッパーに目をかけてもらえ、所有者の負担なしで建て替えが行われる中古マンションに共通する条件は下記の2つです。
- 余剰の容積率(1で解説済み)
- 人気エリアの駅近
不動産デベロッパーは「人気エリア」で「駅近」の中古マンションを狙っています。
一つは、駅前再開発の影響で獲得しなければならない賛成票が「3分の2」となり条件をクリアしやすいこと。もう一つは、単純に駅前は人気があり、需要も価格も上がって「高く売れやすい」ことです。
いくら容積率が余っていて、建て替えれば大きなマンションになるからといっても、都心からは慣れているエリアだったり、駅から何十分も離れていたりしたら売れづらいのはわかりますよね。
不動産デベロッパーからしたら、無事余剰分が売れて利益にならなければやる意味がありません。
実際に、私の知り合いの不動産投資家が建て替え例も、下記のような好立地です。
- 東京まで30分で行けるターミナル駅
- 駅から徒歩3分
- プロのスポーツチームの拠点となって人気が高まっている
立地の良い中古マンションは、建て替えの対象となりやすいです。
建て替え狙いで中古マンションを買うのはリスクが高い!
建て替えられそうな中古マンションをあえて狙い、将来タダで新築マンションを手に入れようと考える人がいますが、その場合は「建て替えが行われないリスク」を十分に考慮しておきましょう。
中古マンションの建て替えを行うには、非常に厳しい条件をクリアしなければならないことはこれまで解説してきた通りです。建て替え前の物件を狙うのはとてもリスクが伴います。
「それなら、既に実施が決まっている物件を買えば良いのでは?」と思うかもしれませんが、建て替えが決まっていてタダ同然で新築が手に入るのことが約束されている物件を、わざわざ売りに出す人はいないです。
また、仮に建て替えの条件が揃っていても、「修繕で十分だよね」という結論になれば実施されません。
建て替えが行われなかったら、「ただ単に老朽化の進んだ物件を購入しただけ」です。そのリスクを受ける覚悟と準備があれば、狙ってみるものおもしろいかもしれません。
お得で安全な中古マンションを購入したいなら、建て替えを狙うのではなく、中古マンションの正しい選び方を学ぶことが一番の近道です。私の記事でポイントを詳しく紹介しているので、リスクを最小限におさえて得したいなら読んでみてください。
【まとめ】中古マンションの建て替えの条件は厳しい!
あなたが中古マンションの建て替えについて何も分からないのは当然です。そもそも実施されている物件はまれで、情報が少ないからです。
全国の0.22%の物件しか建て替えされていないのですから、建て替えについてはあまり心配する必要はないとも言えます。
ただ、建て替えが行われないと、中古マンションを安全に維持していくには「大規模修繕」しか残されていません。ですから、物件を購入する際は、長期修繕計画がしっかり立てられているかを確認することが重要です。(参考:中古マンションと修繕積立金の関連記事)
安全に中古マンションを購入するために、建て替えについてこの記事で学んでおくことも重要ですが、他の記事で失敗しない中古マンションの選び方についても詳しくご紹介していますので、参考にしてください。
中古マンションに長く安全に住み続ける為には、建て替えの知識を得るのと同時に、正しい選び方の基準を学んでおきましょう!
【実録&証拠あり】「たった3,520円」で学べる“不動産会社は絶対に教えない”中古マンションの正しい選び方を公開!
「この物件、本当に買って大丈夫?」
「部屋は気に入ったけど、本当にローン返済していける?」
「業者におすすめされたけど、騙されてない?」
不動産購入は価格が大きい分、不安も大きいですよね。
でも世の中には、その不安が的中して、家を買った後に「こんなはずじゃなかった・・・」と後悔する人がたくさんいます。
後悔する人に共通しているのは、「良い物件の選び方がわからず、不動産会社の言いなりになってしまう」こと。
だから私は、優良物件の正しい選び方を学ぶことに全精力を注ぎました。
その結果、2015年に「710万円」の中古マンションを購入。↓
そして、この物件を2019年に「900万円」で売却できました。↓
単純計算で「190万円」の売却益を得ることができました。
加えて、「投資物件」だったので、運用益も入れて「345万円」が手元に残りました。↓
しかも、所有していた4年間に退去は一度もありませんでした。
このような結果が得られたのは、不動産会社は絶対に教えてくれない「中古マンションの正しい選び方」を学んだからです。
ですから、不動産購入に対して不安を抱えているあなたへ、
- 将来も資産になる物件
- 快適に住める物件
- 金銭的不安のない物件
の選び方をお伝えします。
実体験に基づいた「正しいノウハウ」を学ばないかぎり、良い物件はいつまでも見つかりません。
少しでも興味があれば、「たった3,520円」で学べる“不動産会社は絶対に教えない”中古マンションの正しい選び方の詳細を一度のぞいてみてください。↓