【この記事を書いた人】中田裕二
銀行員、不動産仲介、不動産投資の経験を通して、中古マンション売買に関するリアルな情報を発信。
710万円で購入した中古マンションを、4年後に900万円で売却した実績あり。(投資物件としての運用益も含めて利益は345万円に)
その経験を不動産会社は絶対に教えない中古マンションの正しい選び方としてお伝えしています。↓
手付金は不動産業界特有の制度なので、中古マンション購入をきっかけに初めて知る人も多いのではないでしょうか?
「手付金」は、中古マンション購入のプロセスの中で最初に払う「大きなお金」ですし、トラブルも良く聞きますから、慎重に対応していきたいですよね。
手付金について何も分からず、下記のような疑問を持ったまま不動産会社の言いなりになってしまうと、非常に危険です。
- 「いつまでに、いくら準備すれば良い?」
- 「支払い方法は現金?振込?」
- 「契約をキャンセルしてもお金は戻ってくる?」
- 「手付金が払えない時はローンで借りても良い?」
不動産会社は払うべき手付金の金額は教えてくれるものの、その意味や仕組みまで懇切丁寧に教えてくれません。
ですから、言われた通りに準備して支払ってしまう人がほとんどです。
手付金についてはあなた自身がしっかり情報収集を行って、トラブルにならないようリスク回避しておきましょう。
この記事では、中古マンション購入時における手付金の相場金額や支払い方法、返金の仕組み、払えない時の対処法まで、詳しくまとめてご紹介していきます。
手付金は最低いくら必要?相場金額は?
中古マンションを購入する際に支払う手付金は、あなたと不動産会社で話し合って決めることができます。
不動産会社の言いなりになる必要はありません。
支払う金額に「◯◯円以上」や「物件価格の◯%以上」といった取り決めはないからです。
手付金の一般的な相場は「物件価格の5〜10%」と言われています。
3000万円の物件なら150万円〜300万円です。
ただ、私が不動産仲介会社で働いていた時の経験では、物件価格の「10%」も手付金を入れる人なんて数える程しかいませんでした。
本当にお金のない人のケースでは、7000万円の物件に対して50万円しかお金を出さないということもあったぐらいです。
手付金の相場金額は物件価格の5〜10%ですが、あくまでも目安であり、金額に決まりはありません。
手付金を支払うと一時的にお金が拘束されるので、支払う金額はご自身の貯金を確認して最小限に抑えておいた方が良いです。
手付金はいつ払う?支払い方法は現金?振込?
手付金は、基本的に中古マンションの「契約時」に「現金」で支払いを行います。
ただ、支払い方法には「振込」も可能な不動産会社も例外的にあります。
売買契約の日取りが決まると、仲介担当者から「では、この日までに手付金◯◯円を用意しといてくださいね!」とさりげなく言われます。
この時、「金額の交渉」はできますが、「契約時に支払う」ことは変えられません。
ですから、手付金を準備するのに「定期預金」を崩したり、「保険や株」を解約したりする場合は早めに手続きしておきましょう。
契約日までに準備が間に合わないと契約ができなくなります。
また、現金で不動産会社まで持ってくるのが不安な場合、「振込」で対応できないか聞いてみても良いです。
100万〜200万といったお金を持ち歩き、どこかに置き忘れたり、ひったくられたりしてしまったら目も当てられません。
できる限り、リスク対策をしておくことをおすすめします。
手付金の金額を予め交渉して決定(方法は後述)し、準備は早めに行っておきましょう。
手付金が返金されるかは契約キャンセルの状況次第!
中古マンションの契約を行い、手付金を支払った後にあなたから契約をキャンセルすると、払ったお金は一切返金されません。
逆に、売主の方が契約をキャンセルすると、「2倍」の手付金が返金されます。
支払う手付金は、両者にとって、契約をキャンセルされない為の「人質」という効力があります。
この「人質」の効力を知っていることで、あなたの中古マンション購入を有利に進められるようになります。
もし、契約した中古マンションが人気物件で、絶対に横取りされたくないのなら、手付金を多めに入れましょう。
仮に「あなたより多くお金を払うから買いたい」という人が現れ、売主がそちらに乗り換えたくなっても、売主は2倍の手付金を払うことになるので、キャンセルされにくくなります。
逆に、あなたが他の良い中古マンションに乗り換える可能性が残っているのであれば、手付金はできる限り少なく入れましょう。
手付金を払ってから他に良い中古マンションが見つかることは多いので、少ないお金しか払っていなければ、割り切りやすいですよね。
手付金には「人質」の特性があります。
あなたの戦略に合わせて多めに払うか、少なめに払うか、しっかりと戦略を練って金額を決めましょう。
手付金が頭金にもなる?違いは「ローンで戻る」かどうか!
手付金と頭金は、良く混同するので注意しましょう。
「手付金」とは、中古マンションの契約するときに「一時的に払うお金」です。
「頭金」とは、中古マンションの「購入価格に対して投入する自己資金」のことです。
多くの人がこの2つを混同してしまうのは、「ローンの借り方」によって、手付金が頭金に変化することがあるからです。
住宅ローンを「フルローン※」で借りた場合、中古マンション契約時に支払う手付金は一時的なもので、ローンを借りた時に手付金分のお金が戻って来るので「頭金」になりません。
対して、住宅ローンを「フルローン」で借りなかった場合、契約時に払った「手付金」をそのまま中古マンション購入の資金に充当することになるので、「頭金」に変化します。
(※フルローン:物件価格と同じ金額で借入すること)
簡単にシミュレーションしてみました。
【頭金にならない】
- 物件価格3000万円ー手付金200万円=支払い残金2800万円
- 住宅ローンを3000万円借りる(フルローン)
- 残金2800万にたいして、3000万円のローンが入る
=200万余る
=手付金200万が戻る
=「頭金」ではない
【頭金になる】
- 物件価格3000万円ー手付金200万円=支払い残金2800万円
- 住宅ローンを2800万円借りる
- 残金2800万に対して、2800万円のローンが入る
=余りなし
=手付金200万が戻らない
=「頭金」になる
上記のように、住宅ローンをフルローンで借りると、払った手付金200万円がローンで戻ってくるので「頭金」になりません。
逆に、手付金200万円を支払い、そのお金も支払いに利用する場合は「頭金」という扱いになります。
必ずしも「手付金=頭金」ではありませんので勘違いしないように気をつけましょう。
中古マンションは手付金なしで購入できる?
中古マンションを「手付金なし」で購入することはできません。
「諸費用ローン※」を利用して最終的には1円もお金を出さない計画だとしても、契約時に払うお金は必ず準備が必要です。
※諸費用ローン:物件だけでなく諸費用の分もお金を借りること
(参考記事:中古マンションの住宅ローン審査基準は?)
不動産業界では、「手付金=人質」は必ず差し出さなければいけないルールだからです。
本当にお金がない場合は仲介担当者に相談しましょう。
私が接客したお客さまの中で一番手付金が少なかったのは「7000万円の物件に対して50万円」の人でした。(もちろん諸費用ローンを利用していました)
全くお金がない状態で中古マンションは買えないので、手付金のお金だけはかき集めましょう。
手付金が払えない時の対応策と絶対にやってはいけない行動
どうしてもお金がなくて、手付金が払えない場合の対応策が、主に3つあります。
本来であれば「手付金」と「万が一の場合の生活費」は貯金してから中古マンションを購入して欲しいですが、絶対に欲しい中古マンションが出てきた場合はそうも言ってられないこともあるでしょう。
ただ、どんなにお金がなくても「絶対にやってはいけない対応策」もありますので、合わせてご紹介していきます。
- 両親から贈与を受ける
- 払える金額まで交渉する
- 消費者ローンやキャッシングに手を出さない
1.両親から贈与を受ける
手付金の分だけでも両親から贈与を受けましょう。
暦年贈与の基礎控除が毎年110万円まで利用できるので、贈与税も課税されることなく準備できます。
また、借用書を作成して、一時的に両親からお金を「借入する」という方法もあります。
以前に接客したお客さんは、税理士立ち会いのもと借用書を作成してお金を借りていました。
言葉が悪いですが、両親は一番融通が利きますし安全な方法なので、手付金がない時は最初に当たっておきたい相談先です。
2.払える金額まで交渉する
あなた自身が何とか支払える金額まで交渉してみましょう。
手付金の金額に決まりはないですから、極端な話「1万円」だって良いのです。
ただ、不動産会社が納得する理由を添えないと交渉は難しいです。
「親から借りられる金額が◯◯万円」とか「会社から前借りできるのが◯◯万」など、金額の根拠が必要です。
また、お金はないけど中古マンションを購入する準備はできていることをアピールすることも重要です。
仲介担当者は「手付金のお金もないのに本当に物件買えるの?」と不審に思うからです。
その為には「住宅ローンの事前申込み」の審査を予め通して置くこと有利です。
フルローンや諸費用ローンで審査が通っていれば、中古マンションは購入できるんだという証明になって仲介担当者は安心しますし、手付金の減額にも応じてくれやすいです。
実際に7000万円の物件を手付金50万円で契約したお客様も、事前に住宅ローンの審査が通っているお客様でした。
中古マンションと住宅ローンの関係を解説した記事でも書きましたが、審査方法が少し特殊なので、予め知識を付けておくことをおすすめします。
3.消費者ローンやキャッシングに手を出すな!
手付金がないからと言って、「消費者金融」やクレジットカードの「キャッシング」でお金を準備してはいけません。
利息が高くて今後の返済に苦しむことはもちろんですが、そもそも住宅ローンの審査に落ちます。
銀行は直近の借入状況を詳しくチェックしますから、消費者金融やキャッシングのような使途が見えない借入があると減点されます。
一流企業のエリートサラリーマンでも、消費者金融やキャッシングの履歴が汚れてて住宅ローンが通らず、結局金利が3%〜4%するノンバンクで借りるような人が多いです。
消費者金融やキャッシングは、家計が悪化していく「負の連鎖」の始まりにしかならず、「百害あって一理なし」です。
手付金の準備でお金を借りる場合、まずは両親や勤務先から借りるようにしましょう。
【まとめ】中古マンション購入の手付金は最小限に!
中古マンション購入時の手付金に関して、トラブルに巻き込まれたり、あとで後悔したりするのは、不動産会社の言いなりで流されるまま支払っているからです。
手付金の意味や仕組み、からくりを知っておけば、損する方へ誘導されることはありません。
手付金について、あなたの中で特に戦略はないということであれば、金額はできる限り少なく交渉した方が良いです。
「人質」として拘束される手元資金は少ない方が良いに決まっていますから。
手付金の金額交渉を成功させたければ、検討している中古マンションに対する住宅ローンの事前審査を通しておくことです。
住宅ローンが使えて、中古マンションを購入できることが証明されれば、手付金の減額交渉で有利になります。
また、支払う手付金を減らす方法として、中古マンションの価格そのものを値引き交渉して減額する方法もあります。
仮に手付金を物件価格の1割払わなければならない場合、価格を「3000万円→2700万円」に値引きできれば、支払う手付金も「300万円→270万円」と30万円も減額できます。
(※物件値引きの分も含めたら、330万円もの費用削減効果)
不動産会社は自社利益のために通常の資産価値よりも価格を吊り上げていることがありますから、「適正価格」を知って値引き交渉することは、損しないためには必要な行動です。
手付金の負担を減らすことももちろん大事ですが、狙っている中古マンションの「適正価格」を知って安く購入することも考えておきたいですね。
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